940 本当にあった怖い名無し
小学校の3・4年生くらいのときだったと思う。
当時もゲームはあったけど、まだまだ外で遊ぶ子どもが多かった時代。
俺も学校から帰るなりランドセルを放り出して外に遊びに出た。
だれかと約束してるわけじゃなくて、学校と家の中間地点にある公園に行くと、
たいがいは何人か子どもが集まっていて、同学年のやつが多ければそいつらと遊ぶし、
違う学年の子がパラパラといるような状況なら、
上級生が何かみなでできる遊びを考えてくれたりもした。
夏頃のことだったと思うけど、その日は公園に行ってもだれもいなかった。
しかたなく自転車を置いてブランコに乗っていると、男の子が一人来た。
それは俺とは同じ学年だったけど違うクラスのやつで、
家も近所ではなくどうにか顔を覚えてる程度。
この公園でも前に見かけたことは一度もなかった。
だから最初は話すこともなくて2人で並んでブランコをこいでいた。
けどその日はいつまでたっても他の子どもがやってこない。
するといきなりそいつが「面白いこと教えてやるよ」と言って、誘われて近くにある神社に行った。
941 本当にあった怖い名無し
神社はちょっと小高くなった住宅地の中にあり、その一帯だけ少し林になっていた。
赤い鳥居がたくさん並んでいたからお稲荷さんだったんだと思う。
小さいところで、ふだんは常駐している人もいなかったはずだ。そのときにも人の姿はなかった。
自転車を平らな場所に置くと、そいつは鳥居のある石段の参道を通らず、
ササの斜面を駆け上がって落ちていたペットボトルを拾った。
何をするのかと見ていたら、そのまま境内の手水場に行って水道からペットボトルに水をくみ、
「こっち、こっち」と言いながら右脇のほうから高くなっている社殿の床下にもぐり込んだ。
俺は神社に一人で来ること自体始めてだったし、当然お参りするものだと思ってたから、
お賽銭はあげなかったし手も叩かなかったが、
拝殿の前で形だけ手を合わせてからそいつの後に続いた。
高床といっても床下はクモの巣だらけで高さは1mもなく小学生でも立ってはいられない。
そいつは斜めから日が差し込んでいるところと暗いところの境目あたりにいて、
下の地面にペットボトルの水をこぼしていた。
「何すんの」と聞いたら「泥で人形を作るとちょっとの間生きてるんだよ」と言った。
意味がわからないでいると「やってみせるよ」と水を注いだ上に土を集めてこね始めた。
土といっても灰色がかってかなり細かかったが、すぐにねばりがでてきて人の形になっていった。
かなり慣れているみたいだ。
942 本当にあった怖い名無し
もちろん人形といっても芯のないただの泥土だから手足を長くすれば折れてしまうし、
ヒトデみたいなものなんだが、そいつは「さあできた」と言って人形を地面に置き、
「こうしないとダメなんだ」と、
外から松葉のようなのを拾ってきて顔の部分にぽち、ぽちと目の穴を開けた。
するとその10cmばかりの泥人形が、
バネでも入っているようにぐいんと上半身を起こして座った形になった。
「えっ、嘘!」と思わず声を出してしまった。
人形はそのまま立ち上がり、
奇妙な踊りのような格好をするとそのまま前にぱたっと倒れて動かなくなった。
「これだけなんだけどね。やってみれば」そう言ってペットボトルをよこしたんで、
俺も土を湿らせてやってみた。
粘土よりもずっと粘りがなくてだ円形に数センチの手足の突起をつけるしかできなかったけど、
こねている土がだんだん熱くなってきた感じがした。
だいたい形ができると、そいつが「自分で目を入れなくちゃダメじゃないかな」と言って
松葉をわたしてよこしたんで、さっきやってた通りに顔にあたる部分に2つ目を入れた。
そのとき差し込んだ松葉からものすごく嫌な感じが伝わってきて手を離すと、
下に落ちた人形がビョンと跳ね上がって真ん中あたりで前後に数回折れ曲がり、
前のめりの形でぽっきりと折れた。
943 本当にあった怖い名無し
そのとき、床下の神社の中央部分あたりから急に湿った風が吹いてきた。
そっちを見たら暗い中に青白い光が二つ、何か生き物の目だと思った。
急に心臓がドキドキしてしかも胸が痛くなってきた。
ここにいてはいけない、という気が強くしたんで「ごめん、もう帰る」と叫んで床下から走り出た。
そいつを一人残して石段を駆け下り自転車に乗って家まで帰った。
息はきれていたが胸の痛みはなくなっていた。
その後学校ではそいつと顔を合わせる機会がずっとなかったし、公園でも見なかったんだけど、
体育祭かなんかの臨時の実行委員会でいっしょになった。
その帰りにそいつのほうから寄ってきて、
「この間泥人形やっただろ、あれもっと長く動かせるようになった。にえが必要だったけどな」
と早口で話しかけてきた。
「・・・にえって何?」と聞き返すと、
「カエルとかフナとか、生き物の内蔵を土に練り込むんだ。
そうすると・・・長く生きてる。1分以上は踊ってる」
「・・・どうしてそうやればいいってわかったの?」
「お告げがあるんだよ。次はこうしろ、これをやれって」
あまりに常軌を逸した話だったんで「嘘つくなよ」と言い返したいとこだったが、
この間たしかに泥人形が動いたのを見ている。何だかわからないものの気配も感じた。
それにこの話をしているそいつの目や息づかいから、子どもとは思えない冷たいものを感じて怖くなった。
だから「もう一度、いっしょにやろう」という誘いに生返事をして、逃げるように別れて家に帰った。
944 本当にあった怖い名無し
ひと月くらいして、そいつは学校に来なくなった。
他のクラスのやつの話では、授業の時間はバケツを持って山や川に出歩いているらしかった。
学校の帰りに、釣り竿をもったそいつが自転車に乗ってるのを見たというやつが何人かいた。
「にえを捕まえてるんだろうか」そう考えるとますます怖くなり、一度でもかかわったことを後悔した。
それから10日くらいして、台風の接近のために学校が午前中で終わった日の午後、
大雨の中であの神社の神木に落雷があった。
近くの消防団が駆けつけたが、雨のせいか火事にはなっていなかった。
薄暗い中で、消防団の一人が神社の床下から子どものような足が片方出ているのを見つけた。
そいつが死んでいた。
ここからは子どもの噂なので、真偽のほどはわからない。
むろん警察や目撃者、そいつの親なんかは状況を知ってるだろうけど、確かめたことはない。
まあ漏れたとすればこの人たちからだから。
そいつは雨ガッパを着ていたが、
露出している手や顔の部分には直径5mmくらいの穴が数えきれないほどあいていたという。
ただそれらは命にかかわるほどのものではなく、
病死した後に小動物にやられたという結論になったらしい.。
床下はむっとする生臭さで、そこらじゅうに魚や蛇などの頭が落ちていた。
そしてそいつが倒れていたところから神社の床下の中央部分に向かって、
何百体、もしかしたら千をこえる数の泥人形が積み上げられていた。
小学校の3・4年生くらいのときだったと思う。
当時もゲームはあったけど、まだまだ外で遊ぶ子どもが多かった時代。
俺も学校から帰るなりランドセルを放り出して外に遊びに出た。
だれかと約束してるわけじゃなくて、学校と家の中間地点にある公園に行くと、
たいがいは何人か子どもが集まっていて、同学年のやつが多ければそいつらと遊ぶし、
違う学年の子がパラパラといるような状況なら、
上級生が何かみなでできる遊びを考えてくれたりもした。
夏頃のことだったと思うけど、その日は公園に行ってもだれもいなかった。
しかたなく自転車を置いてブランコに乗っていると、男の子が一人来た。
それは俺とは同じ学年だったけど違うクラスのやつで、
家も近所ではなくどうにか顔を覚えてる程度。
この公園でも前に見かけたことは一度もなかった。
だから最初は話すこともなくて2人で並んでブランコをこいでいた。
けどその日はいつまでたっても他の子どもがやってこない。
するといきなりそいつが「面白いこと教えてやるよ」と言って、誘われて近くにある神社に行った。
941 本当にあった怖い名無し
神社はちょっと小高くなった住宅地の中にあり、その一帯だけ少し林になっていた。
赤い鳥居がたくさん並んでいたからお稲荷さんだったんだと思う。
小さいところで、ふだんは常駐している人もいなかったはずだ。そのときにも人の姿はなかった。
自転車を平らな場所に置くと、そいつは鳥居のある石段の参道を通らず、
ササの斜面を駆け上がって落ちていたペットボトルを拾った。
何をするのかと見ていたら、そのまま境内の手水場に行って水道からペットボトルに水をくみ、
「こっち、こっち」と言いながら右脇のほうから高くなっている社殿の床下にもぐり込んだ。
俺は神社に一人で来ること自体始めてだったし、当然お参りするものだと思ってたから、
お賽銭はあげなかったし手も叩かなかったが、
拝殿の前で形だけ手を合わせてからそいつの後に続いた。
高床といっても床下はクモの巣だらけで高さは1mもなく小学生でも立ってはいられない。
そいつは斜めから日が差し込んでいるところと暗いところの境目あたりにいて、
下の地面にペットボトルの水をこぼしていた。
「何すんの」と聞いたら「泥で人形を作るとちょっとの間生きてるんだよ」と言った。
意味がわからないでいると「やってみせるよ」と水を注いだ上に土を集めてこね始めた。
土といっても灰色がかってかなり細かかったが、すぐにねばりがでてきて人の形になっていった。
かなり慣れているみたいだ。
942 本当にあった怖い名無し
もちろん人形といっても芯のないただの泥土だから手足を長くすれば折れてしまうし、
ヒトデみたいなものなんだが、そいつは「さあできた」と言って人形を地面に置き、
「こうしないとダメなんだ」と、
外から松葉のようなのを拾ってきて顔の部分にぽち、ぽちと目の穴を開けた。
するとその10cmばかりの泥人形が、
バネでも入っているようにぐいんと上半身を起こして座った形になった。
「えっ、嘘!」と思わず声を出してしまった。
人形はそのまま立ち上がり、
奇妙な踊りのような格好をするとそのまま前にぱたっと倒れて動かなくなった。
「これだけなんだけどね。やってみれば」そう言ってペットボトルをよこしたんで、
俺も土を湿らせてやってみた。
粘土よりもずっと粘りがなくてだ円形に数センチの手足の突起をつけるしかできなかったけど、
こねている土がだんだん熱くなってきた感じがした。
だいたい形ができると、そいつが「自分で目を入れなくちゃダメじゃないかな」と言って
松葉をわたしてよこしたんで、さっきやってた通りに顔にあたる部分に2つ目を入れた。
そのとき差し込んだ松葉からものすごく嫌な感じが伝わってきて手を離すと、
下に落ちた人形がビョンと跳ね上がって真ん中あたりで前後に数回折れ曲がり、
前のめりの形でぽっきりと折れた。
943 本当にあった怖い名無し
そのとき、床下の神社の中央部分あたりから急に湿った風が吹いてきた。
そっちを見たら暗い中に青白い光が二つ、何か生き物の目だと思った。
急に心臓がドキドキしてしかも胸が痛くなってきた。
ここにいてはいけない、という気が強くしたんで「ごめん、もう帰る」と叫んで床下から走り出た。
そいつを一人残して石段を駆け下り自転車に乗って家まで帰った。
息はきれていたが胸の痛みはなくなっていた。
その後学校ではそいつと顔を合わせる機会がずっとなかったし、公園でも見なかったんだけど、
体育祭かなんかの臨時の実行委員会でいっしょになった。
その帰りにそいつのほうから寄ってきて、
「この間泥人形やっただろ、あれもっと長く動かせるようになった。にえが必要だったけどな」
と早口で話しかけてきた。
「・・・にえって何?」と聞き返すと、
「カエルとかフナとか、生き物の内蔵を土に練り込むんだ。
そうすると・・・長く生きてる。1分以上は踊ってる」
「・・・どうしてそうやればいいってわかったの?」
「お告げがあるんだよ。次はこうしろ、これをやれって」
あまりに常軌を逸した話だったんで「嘘つくなよ」と言い返したいとこだったが、
この間たしかに泥人形が動いたのを見ている。何だかわからないものの気配も感じた。
それにこの話をしているそいつの目や息づかいから、子どもとは思えない冷たいものを感じて怖くなった。
だから「もう一度、いっしょにやろう」という誘いに生返事をして、逃げるように別れて家に帰った。
944 本当にあった怖い名無し
ひと月くらいして、そいつは学校に来なくなった。
他のクラスのやつの話では、授業の時間はバケツを持って山や川に出歩いているらしかった。
学校の帰りに、釣り竿をもったそいつが自転車に乗ってるのを見たというやつが何人かいた。
「にえを捕まえてるんだろうか」そう考えるとますます怖くなり、一度でもかかわったことを後悔した。
それから10日くらいして、台風の接近のために学校が午前中で終わった日の午後、
大雨の中であの神社の神木に落雷があった。
近くの消防団が駆けつけたが、雨のせいか火事にはなっていなかった。
薄暗い中で、消防団の一人が神社の床下から子どものような足が片方出ているのを見つけた。
そいつが死んでいた。
ここからは子どもの噂なので、真偽のほどはわからない。
むろん警察や目撃者、そいつの親なんかは状況を知ってるだろうけど、確かめたことはない。
まあ漏れたとすればこの人たちからだから。
そいつは雨ガッパを着ていたが、
露出している手や顔の部分には直径5mmくらいの穴が数えきれないほどあいていたという。
ただそれらは命にかかわるほどのものではなく、
病死した後に小動物にやられたという結論になったらしい.。
床下はむっとする生臭さで、そこらじゅうに魚や蛇などの頭が落ちていた。
そしてそいつが倒れていたところから神社の床下の中央部分に向かって、
何百体、もしかしたら千をこえる数の泥人形が積み上げられていた。
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