142 本当にあった怖い名無し

僕の父親は、米国と日本人のハーフ(祖父が日本人で祖母が米国人)なんだ。昔の話になるけど、父親から聞いた不可解な話、書いてみます。

父親が小学校の時に母親(僕からするとお婆ちゃん)が事故で死んだ。父親は一人っ子だから家族三人で東京に住んでいた。仕事の都合もあり父親とお爺ちゃんで、関西圏へ引っ越しした。お爺ちゃんは体が弱く、お婆ちゃんの稼ぎもなくなったから、生活は貧困を極めた。
また、差別もなく、東京で友達と元気いっぱい遊んでいた父は、その白人ゆえの独特な風貌が田舎では相当目を引くらしく、引っ越し先では全然受け入れられなかった。
マイキーが、引っ越し先で友達百人できますように!マイキーくん大好きだ!東京に帰ってきたら絶対に遊ぼう!マイキーなら大丈夫だよ!とみんなが書いてくれた色紙を三畳半の自宅で見つめ、父は毎日泣いていたという。


145 本当にあった怖い名無し
そんなある日々、マイキー(面倒だからマイキーに統一します、僕の父さんです)は、トボトボと河川敷を歩いて一人で帰っていた。可愛い猫がいた。動物、とくに猫が大好きなマイキーは嬉しくなり、猫を追い掛けた。
猫はビニールテントに入った。今でいうホームレスのお家だ。そこには誰も居なかった。中は片付いていたが汚いコタツと汚い家具等々しかなく、マイキーは内心ギョッとしてた。
しば~らく猫を撫でていると、七十代くらいのお爺さんが入ってきた。ここに住んでいるらしい。お爺さんは耳が聞こえないらしく、ニコリとお辞儀すると黙ってコタツに入った。


146 本当にあった怖い名無し
マイキーはやさしい眼差しであるお爺ちゃんに、徐々に心を開きました。
数日間通ってみて、自分の話をしてみようと思いました。亡くなった優しい母親のこと、自分のために汗まみれで働きまくる父親、学校で馴染めない自分…
お爺ちゃんは、耳が聞こえてないはずなのに、無言でコックリコックリ頷きます。お爺ちゃんから、何らかのアドバイスがもらえると思っていましたが、お爺ちゃんは黙っていました。
マイキーが無言で猫を撫でていると、お爺ちゃんが小さな鈴を渡してきました。マイキーは鈴の音が心地よく、すこし気分が上がるのが分かったそうです。ありがとう、といいその日は帰りました。



147 本当にあった怖い名無し
次の日、学校へ行くとランドセルに付けてみた鈴をクラスメートたちが褒めてきました。
この鈴、なんや音がキレイやん!ちびっこくてカワエエなあ~!どこで買うたん?何人かのクラスメートと会話も弾み、マイキーはだんだん会話する友達ができた。
少し日にちが経ってから、クラスメートに河川敷のお爺ちゃんに貰ったんだと打ち明け、二人で河川敷に言ってみた。例のビニールテントがあったので、中へ入った。そこには、例の猫とその横に薄汚れた猫が二匹並んで寝ていた。


148 本当にあった怖い名無し
クラスメートは、あっ!と声を出した。『俺、この猫知ってんで。この右側の猫な、耳聞こえてないねん。』マイキーはビックリして反射的に二匹の猫を触ってみた。
猫はピクリともしない。『死んでる…』ぎゃあ!っとクラスメートはテントを出た。
マイキーは涙が溢れた。ポタっポタっと手の甲に涙がこぼれる。マイキーは、どうしようもなく切なくなり、薄汚れてる猫を抱き上げた。
首輪をつけている。首輪の先にあったと思われる鈴は、ついてない。もう一匹の猫には鈴がついていた。
このガリガリの猫が、あのお爺ちゃんに変身して自分に鈴をくれたんだ、とマイキーは思わずにいられなかった。
胸から込み上げてくる思いでマイキーは大泣きしていた。そこにクラスメートが入ってきて、『この猫、夫婦やったんや。いつも一緒やったもん。左側のキレイな方が何回も赤ちゃん生んだんやけどな
、全部、保健所とか取りにきよってな…』クラスメートもそこまで言って泣いていた。
我が子を守れなかった父親の悲しさがあり、悩んでるマイキーを我が子のように助けにきてくれたのかな、とマイキーは思った。


149 本当にあった怖い名無し
マイキーはその後、関西で友達が増えて極貧ながらも、なんとか生きていくことはできたそうです。

今は都内在住ですが、たまに二人で関西のあの場所に旅行で行くと、僕とマイキーはあの猫たちにお礼を良いながら河川敷で手を合わせます。